一般社団法人 Harmony for JAPAN は東日本大震災で被災された地域の合唱活動に特化して、復興支援を進める社団法人です

理事 吉田功弥(全日本合唱連盟東北支部事務局長)

理事 吉田功弥(全日本合唱連盟東北支部事務局長)

支援される側の情報をしっかり届けよう

東北大震災の後、2011年4月に入って、お互いの状況を確認し合おうと、東北6県の合唱連盟関係者40名ぐらいが福島県郡山市に集まり、会議を行ったときのことです。吉田健太郎代表が、2トントラックに水と食料を積んで、はるばる長岡京市から駆け付けてくれたのです。震災一ヶ月後でまだ混乱しており、支援の受け入れ態勢がまだきちんとできていなかったため行政に連絡を取り、いわきや郡山の各地に水や食料を運んでいただくことになったのですが、吉田代表の熱い思いにはびっくりしました。「何か支援をすることはないか」と何度も電話をいただいていましたが、東北への思いをこうして寄せていただいたことに、本当にありがたく感じました。
厳しい生活状況の中、ホールに多くの方が避難していたり、ホール自体の被災もあり、演奏会を開催することができずに歌う機会がまったくありませんでした。とにかく歌う機会をつくって、まずは歌おうということで、2012年4月、仙台の東北大学・萩ホールで、東北復興大合唱祭を開催。東北6県から1100人が集まり、仙台フィルハーモニーによってオーケストラ版の「水のいのち」、「蔵王」、「唱歌の四季」等を演奏しました。東北の合唱を愛する仲間たちが、初めて前を向くことができた大きな機会だったのではないかと思います。参加者の旅費、宿泊費を主催側で負担して開催する中、ハーモニーフォージャパンから多額の支援をいただいたのは、本当にありがたかったと思います。これがきっかけとなって、ハーモニーフォージャパンの皆さんとつながることができたわけです。その後、社団法人化されるときに吉田代表からお声掛けをいただき、支援される側の情報をしっかり届けようと、二つ返事で引き受けさせていただきました。

「歌う機会」がない合唱団を、長岡京に呼んで歌っていただく

東北の合唱団にはさまざまな支援が行われてきましたが、残念ながら、支援をまったく受けられないでいる合唱団も数多くあります。合唱団にとっての何よりの支援は「歌う機会」があることです。「歌う機会」に恵まれていない合唱団を、長岡京に呼んで歌っていただくことが、ハーモニーフォージャパンで取り組むべきことだと思っています。東北の合唱団の状況を調べて、「こういう合唱団がいるが、こういった理由で演奏ができていない‥」といった情報をまとめ、長岡京で開催されるコンサートに招待する合唱団の選定に活用いただいてきました。
2014年のコンサートで招待いただいた福島の農業高校については、感慨深いものがあります。沿岸部や原発と違って直接的な被害がない地域のため、特に支援もないわけですが、農作物が売れない‥福島ですから…あまり知られていないことですが、そういう厳しい状況にあったわけです。そんな中、震災直後の2011年から、彼らは一緒に歌い始めました。各校の合唱団員は10名程度と少ないため、単独では演奏会ができません。それなら合同でやろうということで、農業高校7校による合同演奏会がスタート、毎年開催してきました。聞きにいって驚いたのですが、上手いんです、彼ら。それに、毎年、レベルがどんどん上がっている。でも、1000人のホールにお客さんは100人程度…こんなにいい活動をやっているのに知られていないのが本当に残念で、「是非、長岡京に呼んでほしい」とお願いをして、実現したわけです。当日は、充実した演奏ができて、本当に良かったと思います。「あんなにお客さんの一杯いるところで歌うのは、二度とないかもしれない」と彼らは嬉しそうに言っていました。大勢のお客様の前で歌い、オーケストラの伴奏で歌い、合同で歌い…招待いただかなければきっとできなかったことを経験しました。彼らは、生涯の宝物を得たのではないかと思います。
まだまだ、そういった合唱団はたくさんあります。そういったところを、長岡京にどんどん送り込んでいきたいと考えています。

故郷に帰ったときにこそ支援が必要

2016年3月には、仙台でロ短調ミサの演奏会が行われます。震災から5年が経つ中、全国各地の合唱団が被災地の仙台に集まり、バッハの演奏を行うということに、大変意義深いものを感じます。東北でもバッハの演奏や研究が盛んで、バッハを受け入れる下地がありますし、仙台はクラシックに力を入れています。そして、各地での指導など、東北をひたむきに支援されている本山先生が指揮をされるわけですから、本当に大きく期待しています。そして、皆さんの熱い思いをしっかり受け止めて、この演奏会を100%やりきりたいと思っています。演奏会場の東北大学・萩ホールは、2012年の東北復興大合唱祭で、東北の仲間が初めて前を向いた思い入れのある場所です。本当に何かを感じますね。
岩手や宮城は沿岸部を除いて少しずつ復興の目途も立ってきているように思えます。でも福島は…今も帰れないで散らばっている状況ですが、きっといつかは帰ります…帰ったそのときにこそ、支援が必要なわけです。しかし、いつまでも支援されるのを期待するのはおかしい。自立していかなくてはいけない。東北の中で、そういった支援の組織を作っていくのが本当ではないかと思います。多くの方々の支援を仰ぎながらにはなりますが、そこのところまで何とか持っていきたいと考えています。

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