一般社団法人 Harmony for JAPAN は東日本大震災で被災された地域の合唱活動に特化して、復興支援を進める社団法人です

理事 辻秀幸 (合唱指揮者)

理事 辻秀幸(合唱指揮者)

私たちは、東北の合唱の仲間に「あなたたちを忘れない。私たちは寄り添っている」というメッセージを届けようと、合唱に特化した活動を続けてきました。
2016年3月、仙台でバッハ最高傑作の「ロ短調ミサ」を演奏します。いろいろなことでつながってきた合唱団をはじめとする音楽の仲間による「きずな」で、東北で演奏会ができるということを意義深く感じています。
震災のことをきちんとした思い出として残すために語り始める。そのことで、前に進むときが来ているのではないかと思います。

福島の合唱がダメになったら、日本の合唱は大変なことになる

震災後1か月後ぐらいでしょうか。「何かやらんといかんと思うのですよ」と吉田さんの声がけで、「合唱に特化」した支援活動が動きだしたわけですが、そのときは、本当に東北はどうなってしまうんだろうと思っていました。原発の問題で大変な福島は合唱王国。その福島で「歌なんか歌っている場合ではない」という状況になってしまったら、文化的な広がりがどんどん落ちてしまう。そういったことにならないように、できるだけ支えたいと考えていました。
関わりのある演奏会では、とにかく募金です。募金箱を置くだけでなく、演奏の合間に、ステージから「福島の合唱がだめになったら、日本の合唱は大変なことになる。東北の被災地に特化した募金にご協力ください」と伝えることで、皆さんが快く募金してくださり、相当な寄付が集まりました。募金箱を置くだけでなく、メッセージをしっかり伝えることがとても大事だと思います。私、実は「集金屋」と呼ばれています。(笑)。
長岡京の復興支援コンサートに東京から駆け付けていますが、2012年には、東京の墨田で、『秀でた幸せを求めたコンサート』というタイトルで復興支援コンサートをやりました。義援金もたくさん集まり、 ハーモニー・フォー・ジャパンから頂いた支援以上のお金を戻すことができました。集めたお金を演奏会に還元したり、還元したコンサートでまた募金をしたりという感じで、好循環ができていると思います。

東北から「きずな」で響くロ短調ミサ

2016年3月に、仙台の萩ホール(東北大学100周年記念ホール)で開催する復興支援コンサートの準備を進めているところです。当初から「行けるようになったら東北に行って演奏会を開こう」という考えがあり、仙台や盛岡の復興の様子を見ていましたが、できそうだということで、 ハーモニー・フォー・ジャパンが5年目を迎える来年に、その第一歩を踏み出すことにしました。
せっかくやるのだからと、バッハ最高傑作の「ロ短調ミサ」を演奏します。音楽に対する真摯な姿勢をはじめいろいろな点で魅了されている本山氏に指揮をお願いしています。オーケストラ、合唱団のメンバーを募っているところですが、オーケストラでは、大学時代の同級生や演奏会でお世話になっているオーケストラのメンバーに声をかけています。「何が支援できるのかもどかしかった。音楽を通して、音楽を愛する人たちのための音楽会に参加できるのは、素晴らしいことだ」との言葉も頂いて、本当にありがたいですね。合唱団の方は、私が首都圏、本山さんが関西で呼びかけています。また、東北から、本山さんの講習会に参加している合唱団や、ロ短調ミサを歌った経験のある放送合唱団などにも加わっていただく予定です。いろいろなことでつながったことがこうして活かされるのは、まさしく「きずな」。東北でそういう音楽会ができるということを意義深く感じます。だからこそ、レベルの高いことをきちんとやろうと考えています。入場料は無料。多くの人に集まっていただく。そして、募金をお願いしていきたいと思います。

一歩、一歩、前へ

仙台空港が復帰した直後に、札幌から仙台空港に向かったときのことです。木が陸に向かって倒れていました。空港に到着してから、復旧したばかりの列車に乗ると、田んぼに車が刺さっているのが見える…まるで爆弾テロのようで、日本で起きたこととは思えませんでした。避難地域を通る相馬の国道を走ったときのことです。スーパー、ガソリンスタント、店はすべて閉まっています。放射能の影響を受けないように、途中は止まることができません。南相馬まで行って、やっと初めての店、セブンイレブンが見えてきて、そのノンストップ道路がやっと終わる…涙が止まりませんでした。
「寄り添う」という言葉は暖かい言葉のように見えるけれど、他にできることがないということです。みんなで何とかしなければいけない、その思いはずっと続いています。「合唱活動に特化」したことによって、金額的には大きくはないけれど、合唱関係者に寄り添うことにはなったのではないか。「あなたたちを忘れない。私たちは寄り添っている」という最初のメッセージは果たすことはできたのではないかと思います。
2016年3月に長岡京市で開催する復興支援コンサートは、震災のことをきちんとした思い出として残すために、語り始める第一歩かもしれません。佐藤賢太郎さんが作詞作曲した「前へ」という曲があります。
…いろいろなものをかかえ、背負っていたけれど、一歩一歩前へ進もう…
まさしく、そういったことだと思います。

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