一般社団法人 Harmony for JAPAN は東日本大震災で被災された地域の合唱活動に特化して、復興支援を進める社団法人です

理事 本山秀毅 (合唱指揮者)

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 私たちは、参加する方が意味を感じ、受け取り手が見えるような支援をしようと、「合唱に特化」した活動を行ってきました。その中で、決して目立っていたわけではない被災地の合唱団にスポットをあてて、きちんとコミットし、思いを伝え聞いてシェアすることを大切にしてきました。復興支援コンサートで、東北から来た方、聞きに来られた方…届くべき人に、しっかりとメッセージが届いている「時」を共有してきたのではないかと思います。
震災から時間が経つ中で、この機会に「あっ、そうだった」と思い起こしてもらうこと、そして、新たな音楽を生み出し、財産として残していくことを、これからの役目として考えていきたいと思っています。

被災地の合唱団にコミットし、メッセージを受け止める

 東日本大震災が起こってすぐに、吉田さんより声がけがあり、「何かやりましょう」と返事をしました。単に演奏会をしてお金を集めるチャリティではなく、参加する方も意味を感じることができるものにしていきたい。また、合唱界にいる中で、受け取り手が見えるような支援をしたいと、「合唱に特化」した活動として、スタートを切りました。
 長岡京記念文化会館で4回にわたり復興支援コンサートを開催してきたわけですが、これだけの思いが付加されている時間ですから、聞き手、東北から来た合唱団、関西から参加した合唱団、企画する側のすべてが手ごたえを感じているのではないでしょうか。いつも注意しているのは、当事者が自己満足に終わってしまうことです。そういう意味では、向こうから来た方、聞きに来られた方…届くべき人に、しっかりと届いていた時間ではなかったかと思います。
 私たちの活動は、小高中にしても大熊中、福島の農業高校にしても、決して目立っていたわけではない、そういったところにきちんとコミットする。そういった人たちの思いを伝え聞いてシェアする。そこのところが、復興支援コンサートの大きな特徴、味を出しているのではないかと思います。
 大熊中は、講師をつとめた会津若松の講習会に参加していました。「被災地の学校ですね」と確認すると、全町で避難していて、避難先の講習会にこうして参加しているとのこと。ああ、そういう思いをしている学校があるのかと、つながることができました。小高中は、審査員をつとめた福島の合唱コンクールで演奏を聞いたのですが、当日、その演奏に感銘を受けたことをフェイスブックに上げたところ、その晩すぐに、小高中の小田先生からコメントが入り、つながることができました。とにかく機会があるたびに、被災地の合唱を支援したいという気持ちで耳を傾けてきたことで、こういった合唱団とつながりが生まれたのではないかと思っています。

コンサートで生まれた曲が財産として残り、広がっていく

 第2回復興支援コンサートで小高中が演奏した「群青」。歌詞など何も配っていなかったのに、よく皆さんキャッチしたなと驚きました。食い入るように聞いたのか‥歌詞を超えて何かぐっときたのか‥。よほどのプロの演奏でなければ、初めて聞いた曲の歌詞を全部わかることはまずありません。今だに不思議です。ある意味、ひとつの「奇蹟」。そういった時間の流れでした。ふつうの人と違う経験をしてきた彼らから、会場で直接聞くメッセージは、本当に重いものです。当日、客席におられた作曲家の信長さんが心を動かされて、「群青」のアレンジを申し出るということも起こりました。
 演奏会は、その日一日の一過性のものですが、その演奏会で新しい曲…「群青」をはじめ、ラターさんの「永遠の花」や信長さんの曲のオーケストラ編曲が生まれてきました。この企画が終わりのときを迎えたとしても、これらの曲が財産として残り、広がっていきます。これは大事なことだと思います。「群青」は広がっていくだろうとは感じていましたが、これほどまでに広がっていくとは、さすがに想像できませんでした。「永遠の花」も広がっています。機会あるごとに、こういう理由でこういう曲が生まれましたと伝えながら、全体合唱で取り上げるように心がけています。もっと広がっていってほしいと思います。

思い起こしていただくことが大事な役目に

 いわき、会津で講習会を毎年行っていますが、すでに復興して、盛んに合唱をしているところが多いですね。支援してもらわなくても、やっていけると思います。でも、費用面で長岡京に呼べていない釜石の高校とか厳しい状況の合唱団はまだまだあると思うんです。手を差し伸べるわけではないけれど、ちょっとしたきっかけで実り豊かな合唱活動ができるようなところに関わりを持っていければと思っています。
 どこに向けてメッセージを送るか。向こうのメッセージをだれに担ってもらうか。社会全体で震災が遠い昔の話になりかけているところで、毎回、このカレンダーでどんな気持ちを呼び起こすためにやるのか、そういうことをしっかりと考えていく必要があると感じています。ただ、やれるからやっているだけでは、人の気持ちはどんどん離れていくような気もしますしね。
 逆に、この機会にそういったことを「あっ、そうだった」と思い起こしてもらうことが大事な役目になっていくのではないか。そして、音楽を生み出していって、財産を残していくということも大切にしていきたいと思います。
 来年は仙台で、東北の人たちを交えて「ロ短調ミサ」を演奏します。いろいろな形で多くの方に参加いただくというところまでには至っていませんが、5年目にして、ひとつの目指していた形が実現するということで、きちっと質の高いものにしていきたいと考えています。

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