一般社団法人 Harmony for JAPAN は東日本大震災で被災された地域の合唱活動に特化して、復興支援を進める社団法人です

群青

Harmony for Japan2013(2013年3月9日)「群青」 指揮:小田美樹 演奏:南相馬市立小高中学校特設合唱部

Harmony for Japan2013(2013年3月9日)「群青」
指揮:小田美樹 演奏:南相馬市立小高中学校特設合唱部

 2013年3月9日・10日に長岡京記念文化会館で行われた「復興支援コンサートHarmony for JAPAN 2013」で、東北からの招待合唱団として参加した南相馬市立小高中学校特設合唱団により演奏された「群青」は、会場を大きな感動で包みました。自身の合唱曲の管弦楽版演奏に居合わせておられた作曲家・信長貴富氏は感銘され、編曲に取り組んでいただくことがその場で決まり、混声4部、混声3部、同声2部による「群青」合唱編曲版が生まれました。

群青の絆

 小高中学校のある福島県南相馬市小高区は、福島県の東端、浜通りと呼ばれる地域にあります。福島第一原子力発電所の北、半径20km圏内に全域が入り、住民全員が今なお避難生活を送っています。

 平成24年度の卒業生は東日本大震災当時の1年生でした。106名いた学年の生徒のうち2名が震災時の津波の犠牲となり、97名がその後の原発事故による避難のため、北は北海道、南は長崎まで散り散りとなりました。4月22日にやっと市内の中学校を間借りして学校を再開したときには学年の生徒はたったの7名となっていました。

 ある日のことです。小田美樹教諭が、誰がどこにいるのかを確かめながら仲間の顔写真を大きな日本地図に貼り付けていると、「遠いね」「どうやったら行けるの?」「でも、この地図の上の空はつながってるね」…生徒たちの口からこぼれる気持ち。その日から生徒たちのつぶやきを綴る日々が始まりました。

 小高中学校の校歌に「浪群青に躍るとき」という一節があります。文化祭の名称は「群青祭」、野球チームも「小高群青クラブ」と名付けられるなど、小高中学校の誰もが自分たちの色と感じている色の名前が「群青」であり、まさしく絆。綴ってきた生徒たちの言葉を「群青の絆」に寄せて、小田教諭が歌詞にまとめあげ、曲をつけて、「群青」が生まれました。

小高中学校とハーモニーフォージャパンの出会い

 2012年の夏に開催された福島県合唱コンクールに、理事・本山秀毅氏は審査員として伺っていました。その中で、コンクールの価値観とは別の観点で、ひときわ強烈な印象を残した演奏に出会ったのです。原発事故の影響で避難生活を続けている地域から、南相馬市立小高中学校がたった1校参加し、20人ほどの混声合唱で、アメリカの現代作曲家ストループの「エレミヤの哀歌」を演奏したのです。本山氏は、その鮮烈な印象をフェイスブックに投稿しました。

 エレミヤの哀歌は、旧約聖書の時代、預言者エレミヤが、エルサレム炎上とそれに続くバビロン捕囚の、苦難に満ちた時代を嘆いて歌ったもので、古今の作曲家が歌詞としても魅力のあるこのテキストに音楽をつけている。

O vos omnes, qui transitis per viam. Attendite et videte: si est dolor similis sicut dolor meus. recordare Domine, intuere et respice.

おお、すべての道行くものよ、立ち止まって見て見なさい
私の苦しみに似た苦しみがあるかどうかを
神よ、憐れみ給え、そして心に憶えたまえ

 この情感豊かなテキストを、彼らは、ある時は激情と共に、またある部分は嘆願するかのごとく、全身全霊で歌いあげた…

 「凄かった」とか「感動した」というような言葉がどれも当てはまることのない、今までに聴いたことのないような心持ちになった。もちろん選曲の趣旨は彼ら全員に浸透していて、そのことが明確に発信された極めて訴求力のある音楽だった。恐らく彼らもこの曲に思いを託することで、励まされたり、慰められたりしているのだと言うことさえ、誇り高く歌う彼らの姿からはっきりと拝察できた。先生の指揮の、音を保つ際の小刻みに震える動きからは、この瞬間に賭ける強い意志が伝わってきた。

(2012年9月1日 本山秀毅氏フェイスブックより)

 その記事を読まれた郡山の合唱団のトレーナーの方が、小高中学校で指揮をされていた小田教諭と大学の同期で、その記事のことを連絡。それを読んだ小田美樹教諭がフェイスブックで本山氏に連絡されたことから、つながりが生まれ、「復興支援コンサートHarmony for JAPAN 2013」への招待と、話が進んだのです。

会場を大きな感動で包んだ演奏

本山氏に、「復興支援コンサートHarmony for JAPAN 2013」での小高中学校の演奏について、振り返っていただきました。

 よほどのプロの演奏でなければ、最初に聞いた曲の歌詞を全部わかることはありません。「群青」の歌詞は何も配っていなかったのに、よく皆さんキャッチされたなと驚きました。食い入るように聞いたのか、歌詞を超えて何かぐっとくるものがあったのか‥今だに不思議です。ある意味、「ひとつの奇跡」、そういった時間の流れだったのと思います。1曲目「エレミア哀歌」、2曲目が「ファイト」、そして、「群青」。3曲目にどんな曲が来るのかわからなかったですよね。被災地の中学生が歌うということだけでぐっとくるものはあったことも確かですが、自然な流れで「群青」につながっていったのは凄いことだったと思います。最初に低い音だったから、自然にクリアに歌詞が聞こえました。そのまま、ぐっと歌詞を理解しようという気持ちがお客さんに働き、ぐっとフィットしていったのではないでしょうか。

 彼らが、初めて、舞台から自分たちのメッセージを発信できた瞬間だったのではないかと思います。直接聞く、彼らのメッセージは重く、本当にインパクトがありました。

 「群青」は、全国各地で歌われています。2014年8月の24時間テレビにも、「歌えなかった子どもに力を与えたキセキの合唱曲」として取り上げられました。彼らのメッセージは、確実に広がっています。

出版情報

15179作詞者:福島県南相馬市立小高中学校平成24年度卒業生(構成・小田美樹)
作曲者:小田 美樹
編曲者:信長 貴富
訳詞者:ヘルビック 貴子(英語版)
出版社:Pana Musica
伴奏:ピアノ伴奏
声部編成:混声四部・混声三部・同声二部・混声四部(英語版)・同声二部(英語版)

この曲集の収益は、一般社団法人 Harmony for JAPANを通して被災地の合唱活動の支援に用いられます。

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